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第77話  夜風と告白未満

last update publish date: 2026-08-10 19:00:19

映画館を出ると、夜風が頬をすり抜けていった。

朱里は両手をコートのポケットに突っ込み、少しうつむきながら歩く。

隣を歩く嵩の足音が、一定のリズムで耳に響いていた。

「風、冷たいな」

嵩がぼそりと言う。

「そ、そうですね……でも、気持ちいいです」

朱里は、さっきまでのドキドキを誤魔化すように笑った。

──“理由、言ったら来なかったかもしれないから”

あの言葉が、まだ胸の奥でくすぶっている。

理由って、なに?

“仕事の後輩だから”? “たまたま空いてたから”?

それとも……。

横顔をちらりと見た。

嵩
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